大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所 昭和44年(行コ)10号 判決

別府市亀川仲町九組

控訴人

河野丸蔵

右訴訟代理人弁護士

広石郁男

市光町二二番二五号

被控訴人

別府税務署長

江平一夫

右指定代理人検事

日浦人司

法務事務官 原田義雄

大蔵事務官 上原光正

大蔵事務官 三宅克已

大蔵事務官 田川修

大蔵事務官 宮田正敏

右当事者間の裁決取消請求控訴事件について当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「一、原判決を取消す。二、被控訴人が控訴人に対し昭和四〇年六月一七日付で控訴人の昭和三九年度の所得税に関しその課税総所得金額を金五五万七、六〇〇円と更正した処分のうち金四万四、一〇〇円を超える部分(但し熊本国税局長の審査決定により取消された部分を除く。)を取消す。三、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人指定代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張並びに証拠関係は次に付加するほか原判決事実摘示と同一であるからこれをここに引用する。

一  控訴代理人において

(一)  控訴人主張の腐敗の意味は科学的腐敗のほかに販売に適しない精肉をも含むものである。

(二)  昭和三九年一月頃から同年四月頃まで五〇万円相当の精肉を腐敗させたことは例外的事実であるが、これは次の事実に基因する。すなわち、控訴人の店舗近くに「まるしよく」と称するスーパー店の精肉部が昭和三七年一二月に発足したので同業者に打撃を与えたが、控訴人もこれに対抗すべく前記期間思い切り多量に仕入れ、又不良肉部分を廃肉としたものである。更に控訴人店舗は当時冷蔵設備ももたず、屠殺した生肉は一応別府市屠殺場にある冷凍庫に保管を依頼して必要の都度これを持ち出したが、急速に増加した取扱量に店頭設備が対応し切れなかつたため多量の腐敗肉を出したものである。

と述べ、

二  被控訴人指定代理人の右主張事実は知らない。と述べた。

三  証拠関係につき、控訴代理人は新たに甲第五号証を提出し、当審証人清島義視、同西本一夫、同林和進の各証言を授用し、乙第一一ないし一三号証の各成立を認め、被控訴人指定代理人は新たに乙第一一ないし一三号証を提出し、当審証人羽矢泰彦、同井手昭男の各証言を授用し、甲第五号証の成立は不知と述べた。

理由

当裁判所も控訴人の本訴請求を失当として棄却すべきものと判断するがその理由は次に付加するほか原判決理由に説示するところと同一であるからこれをここに引用する。

一  原判決六枚目表二、三行目「本件全立証によつてもいまだ右事実を認めることはできない。」とあるのを、「右主張に副う原審並びに当審における証人林和雄、同西本一男の各証言は後記証拠に比照してたやすく措信し難く他にこれを認めるに足る確証は存しない。」と改め、同四行目「もつとも」の次に「右」を加える。

二  原判決七枚目表一〇行目の次に「更に成立に争いない乙第一三号証並びに当審証人井手昭男の証言によると、控訴人主張のまるしよく、実は当時丸食亀川販売店食肉部の名称で別府丸食とは関係なく訴外河原長一が右丸食の店舗を賃借りして個人営業したものであつたが、その開店が昭和三七年一一月であつたことは一応認められるが、そのためこれと対抗すべく控訴人が屠殺頭数を昭和三九年一月より四月までの間著しく増加したところ店舗に冷凍設備を欠いたため例年にない多量の腐敗肉を生じたこと、なお良質の商品を売るために不良肉部分を敢えて廃肉として処理したとの点については、成立に争いない乙第一一、第一二号証並びに当審証人羽矢泰彦の証言に徴すると、控訴人主張の昭和三九年一月より四月までの期間における屠殺頭数は牛一五頭であり昭和三八年中の右期間における屠殺頭数は牛一三頭、豚三頭であり、昭和四〇年中の右期間における屠殺頭数は牛一八頭、豚一頭であり、昭和三九年の右期間における屠殺頭数は例年同期のそれよりむしろ少ない位であること、尤もこれを各年度毎に通算すれば昭和三九年が牛五四頭、馬三頭であり、昭和三八年が牛四〇頭、馬七頭、豚四頭であり、昭和四〇年が牛四四頭、豚二頭であり昭和三九年の屠殺頭数が昨年度や翌年度より約一〇頭前後増加していることが認められ、右の認定に副わない当審証人清島義、原審並びに当審証人林和雄の各証言並びに右清島の証言により成立が認められる甲第五号証の記載は前 証拠に比照してその正確性に疑問がもたれやすく措信し難い。なお、前掲清島義視の証言によると昭和三九年中の控訴人の屠殺生肉がその全部を自己販売用に供することなく同業者に分けられたものとも現われ(尤も右林和雄はこれを否定するも同人の証言は措信し難い。)必ずしも屠殺頭数のみによつては控訴人の販売取扱量を推定し難い。又控訴人店舗が昭和三九年当時冷凍設備を欠いたものとの点についても当審林和雄の証言に欲すると、当時控訴人店舗には一応底面積一坪位、高さ六尺位の冷凍機一台を備えつけていたことが認められ、尤も右林は原審においては底面積約三坪位の冷蔵庫があつたと証言している。)

右の認定を覆えすべき証拠は存しない。控訴人が良質の肉をもつて対抗すべく敢えて不良肉部分を廃肉として処理したとの点についてもこれに副う前掲林和雄の証言はたやすく措信し難く他にこれを認めるに足りる証拠はない。」を加える。

三  判決七枚目裏一行 「ただちに」の次に「昭和三九年中に」を加え、同三行目「ないのであり」とあるのを「ない。」と改め、同行目「また」より同四行目「できない。」までを削る。

よつて原判決は相当であり本件控訴は理由がないからこれを失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条第八九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 江崎彌 裁判官 彌富春吉 裁判官 白川芳澄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例